セグメント配信が効いているかどうかは、一つの数え方で当たりが付きます。いま設定している区分の数と、実際に作り分けている内容の種類の数を、並べてみる。
二つが一致していれば、分類は作る単位として機能しています。区分が六つあって内容が二種類なら、四つの区分は同じものを受け取っています。同じものを受け取る区分は、分けている意味を持ちません。
この数え方が効くのは、二つが一致していないことが少なくないからです。そして一致していないことは、反応の数字には現れません。反応が上がらなければ「分け方が粗い」という読みが出て、区分がさらに増えます。増えた区分も同じ内容を受け取るので、次はもっと粗いという読みが出ます。
一致しない理由は、順序にあります。分け方を先に決めて、その後に内容を作ろうとしている。内容は分け方より遅く増えるので、区分の数はいつでも先行します。分け方が先に決まってしまうのは、区分を器として先に用意する形式に慣れているからです。器の側を先に置く形が何を持ち込むのかはマーケティング設計の全体像で扱っています。
そして、分ける軸そのものにも問題があります。案内されている軸は、ほぼすべて属性です。居住地、年代、購入履歴、職種。属性で分ける操作は、集団について観測されたことを、その集団に属する一人へ当てはめるという推論を含んでいます。この推論には、統計の分野で名前の付いた誤りが対応します。集団の水準で成り立つ関係は、個人の水準では成り立たないことがあり、逆向きになることもあります。
扱うのは、属性という軸が選ばれている理由。状態で分けるとはどういうことか。そして、いま分けている軸が状態になっているかの読み方。この三つは、本文で答えが出ます。
扱わないものが二つあります。区分をいくつ作るのが適切かは、ここでは出ません。それは持っている内容の種類が決める値で、その在庫はあなたの側にしかありません。もう一つ、配信の道具でどう実装するかも扱いません。実装の手順は道具ごとに違い、しかも軸が決まっていれば実装は後から付いてきます。
実害がどこに出るかも書いておきます。推論を結論として受け取ると、外れ始めたときに直し方が一つに固定されます。間に何があったかを持っていないので、切り方を細かくする以外の手が出てこないからです。
そして、この処方は必ず実行できます。属性は登録の時点で取れているので、細かく切り直す作業には材料が要らないからです。手元にある材料だけで完結する処方は、材料の外にある原因を検討の対象から外します。
📖 目次
セグメント配信の条件として並ぶのは、ほぼすべて属性である
案内されている助言は、どれも実務として正確です。そのうえで、軸の選び方が一種類に偏っています。
セグメント配信とは、名簿を条件で絞り込み、対象ごとに内容を変えて送る方法を指します。ターゲット配信とも呼ばれ、一斉に同じものを送る形式と対比される方法です。
分ける軸として挙げられるのは、属性と履歴です。居住地、年代、性別、職種、業種、会社の規模。購入したことがあるか、何を買ったか、いつ買ったか、いくら使ったか。これらを組み合わせて条件を作る形が示されます。
効果として説明されるのは、四つです。開封される割合が上がる。押される割合が上がる。申し込みに至る割合が上がる。配信を止める人が減る。
実行の助言としては、最初から細かく分けすぎないことが挙げられます。二つか三つの区分から始める。分けるほど準備の手間が増えるため、運用が続かなくなる、という理由が添えてあります。
どの助言も、実務としては正確です。関心の近い内容が届けば反応は上がりますし、無関係な内容が続けば止められます。細かく分ければ手間が増えるのも事実です。
この一式には、共通の前提が入っています。いずれも、属性が関心の代わりになることを前提にしています。
三十代の会社員には三十代の会社員向けの内容を、購入履歴のある人には次の商品の案内を。属性から関心を推定する操作が、分けるという操作の中身になっています。
この推定が常に外れる、という意味ではありません。属性と関心が強く結び付いている領域は、実際にあります。
崩れるのは、推定であることが実行の段階で忘れられるときです。条件で絞った時点で、その集団は「そういう関心を持つ人たち」として扱われます。推定だったことは、送る内容には残りません。
推定が当たったかどうかを確かめる工程は、どこにも用意されていません。反応が上がれば当たったことになり、上がらなければ分け方が粗かったことになります。どちらの解釈も、属性という軸そのものは疑いません。
四つの効果にも、性質の違いがあります。開かれる割合が上がることと、止める人が減ることは、同じ操作の別の面です。関係のない内容が届かなくなれば、どちらも動きます。
ところが、申し込みに至る割合が上がることは、別の要因を必要とします。内容が近いだけでは足りず、その時点で必要が発生している必要があります。四つを同じ列に並べると、この差が消えます。
四つが同時に動くこと自体は、よく起きます。起きるので、まとめて効果として語られてきました。動かなかったときに四つのどれが動かなかったかは、分けて見ないかぎり出てきません。
属性で分けるとき、実際に行われている推論
分ける操作は、三つの手順に分かれます。
第一に、名簿を条件で絞ります。ここで得られるのは、その条件に当てはまる人の集合です。
第二に、その集合について何かを想定します。「この層は価格に敏感だろう」「この層は導入事例を求めるだろう」。
第三に、想定に合わせた内容を作り、送ります。
第二の段階が、推論です。そして、この推論の根拠の多くは、集団についての知識です。過去のデータ、業界で共有されている傾向、こちらの経験。
つまり、行われているのは、集団について観測された傾向を、その集団に属する一人ひとりへ当てはめることです。
この操作には、社会学で古くから知られた注意点があります。1950年、W・S・ロビンソンは、集団の水準で計算した相関と、個人の水準で計算した相関が一致しないことを示しました(Robinson, 1950, American Sociological Review, 15(3), 351–357)。
示された例は、移民の比率と識字の比率でした。州ごとに集計すると、移民の割合が高い州ほど識字率が高いという関係が出ます。ところが個人の水準で見ると、関係は逆でした。移民のほうが識字率は低かったという結果です。
なぜ逆になるか。移民が多く集まっていたのが、もともと識字率の高い州だったからです。集団の水準で見えていたのは、移民と識字の関係ではなく、移民がどこに集まったかという別の関係でした。
名簿へ当てはめると、こうなります。「この属性の層は反応が良い」という観測は、その属性が反応を生んでいることを意味しません。その属性の人が、たまたま別の理由で反応しやすい状況にいた可能性が残ります。
実務では、当たればよい。原因まで特定する必要はない。当たっているうちは、それで足ります。
外れ始めたときに、何を直せばよいか分からなくなります。属性と反応の間に何があったかを知らないので、属性の切り方を細かくするという処方しか出てきません。
属性を使うな、という意味ではありません。状態が分からないとき、属性は最初の当たりを付ける材料になります。
属性で分けた結果を「その層はこういう人たちだ」と読んだ時点で、推論だったことが結論に変わります。
この誤りは、規模が大きいほど検出しにくくなります。件数が多いと、集団の水準の数字が安定するからです。安定した数字は、確からしく見えます。
確からしさが増しているのは、集団についての記述の精度であって、個人への当てはめの妥当性ではありません。二つは別の量ですが、同じ画面に一つの数字として表示されます。
個人まで正確に当てる必要は無く、全体として反応が上がれば足りる。配信の効率という尺度では、そのとおりになります。
そのうえで、全体として上がっている状態には、当たった人と外れた人の両方が含まれています。外れた人には、無関係な内容が「あなた向けです」という形で届いています。
この形で届いた内容は、無差別に届いた内容より強く記憶されます。名指しされた誤りは、名指しされていない誤りより残るからです。
軸を決めているのは、重要度ではなく取りやすさである
なぜ属性が軸として選ばれるのか。関心を最もよく説明するからではありません。取りやすいからです。
登録の時点で、属性は取れます。入力欄を一つ増やせば、年代も職種も手に入ります。
一方、いま何を解こうとしているかという状態は、登録の時点では取れません。取れたとしても、翌月には変わっています。
属性は静的で取りやすく、状態は動的で取りにくくなります。この差が、軸の選択を決めています。
そして、取りやすさで軸が決まると、分けた結果も取りやすさに従います。手元にあるのは属性で分けた集団だけなので、内容も属性に向けて作られます。
帰結は一つです。属性に向けて作られた内容は、その属性の人が共通して持つものにしか触れられません。三十代の会社員が共通して持つものは、想像より少ないと分かります。
共通して持つものが少ないので、内容は一般的になります。一般的な内容は、誰にも強くは当たりません。
つまり、細かく分けているのに内容が一般的になるという組み合わせが起きます。これは分け方が粗いからではなく、軸が関心と別のところにあるからです。
そして、この組み合わせは自分では検出しにくくなっています。細かく分けたという事実のほうが、手元に残るからです。設定した区分の数は画面に表示されますが、内容がどれだけ一般的かを表示する欄はありません。
取りやすさが軸を決めるという構造は、属性に限りません。測れるものが目標になり、測れないものが背景になります。この形は、指標を扱う場面で繰り返し現れます。分類の場合に特殊なのは、測ったものが人の側に貼り付けられ、その後の扱いを決めることです。
取りにくいものを取る方法が無いわけではありません。状態は、尋ねれば取れます。尋ねるには手間がかかり、応じない人も出ます。つまり取りにくさの実体は「取得できない」ではなく「取得に費用がかかる」であり、費用は払えます。
それでも払われないのは、費用が前払いで、効果が後払いだからです。属性は登録の時点で無料に近い費用で取れ、その場で区分が作れます。状態は尋ねる工程を挟み、返答を待ち、分布を読んでから区分が作れます。二つを並べると、前者のほうが速く形になります。
速く形になるほうが選ばれ続けると、遅いほうは一度も試されません。試されないものは、効かないと分かったわけではなく、比べる機会が無かっただけです。この差は、区分の一覧を見ても現れません。一覧に並ぶのは、実行された側の区分だけだからです。
購入履歴は状態に近いが、示すのは過去の状態である
購入履歴は行動の記録なので、属性とは違います。この読みは、半分だけ当たっています。
購入履歴は、状態に近い側の情報です。その意味で、属性より有効です。
ただし、履歴が示すのは過去の状態です。買った時点で何を解こうとしていたかは分かりますが、いま何を解こうとしているかは分かりません。そして、買った直後は状態が変わっている可能性が高い時期です。
これは顧客生涯価値(LTV)で扱った、過去の平均から将来を見積もる操作と同じ場所にあります。手元にあるのは過去の記録だけで、扱う対象は現在の人です。
購入の直後が使えない、という意味でもありません。買った直後は、こちらへの関心が高い時期でもあります。
その時期に送るべき内容は、次の商品の案内とは限りません。買った直後の状態は「選び終えた」ではなく「使い始めた」であり、必要としているのは次の選択肢ではなく、使う段の材料になります。
履歴で分ける形式には、別の穴もあります。購入していない人が、一つの集団に押し込まれます。「未購入層」という区分です。ここには、まだ知ったばかりの人と、検討して見送った人と、必要が無い人が同居しています。三つは、内容の必要がまったく違います。
そして、この区分は名簿の大きな部分を占めることがあります。人数の多い区分が、分解されていない区分になっています。分解されていないので、そこへ送る内容は「全員向け」に戻ります。細かく分けた区分の隣に、分けていない巨大な区分が残る形です。
履歴の側には、時間の問題ももう一つあります。買った回数が同じでも、いつ買ったかで意味が違います。三年前に一度買った人と、先月一度買った人は、履歴の上では同じ「一回購入」です。片方は既に関係が切れており、もう片方は始まったばかりです。
回数で分ける形式は、この差を持ちません。日付を条件に入れれば持てますが、その瞬間に区分の数が掛け算で増えます。増えた区分に別々の内容を作れない場合、増やしたのは条件の数であって、分類ではありません。
履歴が有効に働く場面は、それでも残ります。買ったものの種類が、そのまま解こうとしていた問題を示している場合です。この場合、履歴は状態の記録として読めます。買ったものが一種類しかない事業では、この読み方は使えません。種類が一つなら、購入の有無しか記録されないからです。
分けた軸は、分けた側の認識を固定する
分ける操作には、こちら側への影響もあります。分けた軸が、その後の思考の単位になります。
名簿を年代で分ければ、その後の会話は年代の話になります。「三十代の反応が良い」「四十代には別の切り口が要る」。
会話の単位が年代になると、年代以外の切り方は思いつかなくなります。手元のデータが年代で並んでいるからです。
この固定は、分類が正しいかどうかとは無関係に起こります。間違った軸でも、使い続ければ思考の単位になります。
さらに、分類には名前が付きます。名前が付いた集団は、実体を持っているように見えます。「初心者層」「検討層」「休眠層」。
これらは、こちらが定義した条件の集合です。ところが名前で呼び始めると、その名前に対応する人々が実在するように扱われます。
実在するように扱われると、その集団の性質についての説明が積み上がります。「初心者層は具体的な手順を求める」「検討層は比較の材料を求める」。
説明が積み上がるほど、個別の相手を見る理由が減ります。分類が分かれば、性質も分かることになるからです。
分類なしに大量の相手を扱うことはできず、分類そのものは必要だ——必要です。
難しいのは分類することではなく、分類の名前が説明として機能し始めることです。
「休眠層だから反応しない」は、説明の形をした分類の言い換えです。反応しない人を休眠層と呼んでいるので、この文は何も説明していません。
言い換えに気づけば済む、という話でもありません。言い換えであることを知っていても、名前があるほうが会話は速く進みます。
分類の名前を、こちらから見た状態ではなく相手の側の状態で付け直すと、説明の形をした言い換えは減ります。「休眠層」ではなく「六か月取引の記録が無い層」と呼べば、それが観測の記述であることが残ります。
この付け替えには、費用がほとんどかかりません。呼び方を変えるだけだからです。そして効果は、会話の中身に直接現れます。
「休眠層をどう起こすか」という問いと、「六か月記録の無い人に何が起きているか」という問いは、出てくる答えが違います。前者は働きかけの方法を探し、後者は状態を調べる方向へ向かいます。
ただし、記述的な名前は長くなります。長い名前は、日々の会話では省略され、やがて元の短い名前に戻ります。
戻らないようにするには、名簿の側の区分名そのものを書き換えておく必要があります。画面に表示される名前が、会話の語彙を決めるからです。
状態で分けるとは、どういうことか
状態とは、いまその人が何を解こうとしているかです。
三つの水準があります。
第一の水準は、問題を言葉にできていない状態です。何かがうまくいっていないことは分かるが、それが何の問題かが特定できていない。
第二の水準は、問題を言葉にできていて、方法を探している状態です。何を解くべきかは分かっており、どう解くかを比べている。
第三の水準は、方法を選んでいて、実行の途中にある状態です。進めているが、途中で止まっている箇所がある。
三つが必要とする内容は、互いに重なりません。第一の水準に方法の比較を送っても、何を比べているのか分かりません。第三の水準に問題の言語化を送っても、既に済んでいます。
そして、三つは属性と対応していません。同じ年代、同じ職種、同じ購入履歴の人が、三つのどれにいてもおかしくありません。
さらに、同じ人が、時期によって三つを行き来します。一つの問題を解き終えると、次の問題では第一の水準に戻ります。
状態で分けるとは、その時点の位置で分けることであり、その位置は固定されません。
ここに、実務上の難しさがあります。固定されないものを、名簿の属性として保存することはできません。保存した瞬間に古くなります。
したがって、状態で分ける方法は、保存ではなくその都度の申告になります。
申告を求める形式は、相手に手間をかけます。手間をかけた分、応じる人は減ります。
そして、応じなかった人の状態は分からないままです。分からない人を一つの集団として扱うことになり、そこでは結局、属性か履歴を使うことになります。
三つの水準は、こちらが決めた枠に相手を当てはめているだけではないか。属性で分けるのと同じではないか。似ています。
違いは二つあります。一つは、当てはめるのが相手だということです。属性では、こちらが条件で絞ります。水準では、相手が自分で選びます。選び手が違えば、外れたときに分かるかどうかも違います。
もう一つは、枠が動くことです。属性は登録の時点で固定されますが、水準は選び直せます。選び直せる枠は、間違っていても訂正されます。
三つという数に、根拠があるわけではありません。扱っている領域によって、二つのこともあれば四つのこともあります。必要なのは数ではなく、それぞれの水準で必要とする内容が実際に違うことです。違わないなら、分ける意味がありません。水準の名前だけが増えます。
状態は、相手に申告してもらうのが速い
状態を推定する方法は、二つあります。行動から推定する方法と、申告してもらう方法です。
行動からの推定は、材料が要ります。どのページを見たか、何を押したか、どれだけ滞在したか。これらから状態を推定する仕組みは作れますが、推定である以上、外れます。
そして、外れたことは分かりません。推定に基づいて送った内容が読まれなかったとき、推定が外れたのか、内容が悪かったのかを区別できないからです。
申告してもらう方法は、単純です。「いまどれに当てはまりますか」と尋ね、選んでもらう。
この方法には、三つの利点があります。
第一に、推定の誤差が入りません。本人が選んでいるからです。
第二に、選ぶという行為そのものが、相手の側の整理になります。三つの水準から選ぶには、自分がどこにいるかを一度考える必要があります。考えた結果は、こちらの側だけでなく相手の側にも残ります。
第三に、こちらが何を扱っているかが伝わります。選択肢の並び方そのものが、こちらの持っている枠組みを示します。
申告が常に正確とも限りません。自分の状態を正しく把握できていない場合はありますし、そもそも本人が第一の水準にいるときは、選ぶための語彙を持っていません。
したがって、選択肢の書き方が重要になります。分類の名前ではなく、その状態にいる人が使う言葉で書く必要があります。「問題認識の段階」ではなく「何が問題なのかがまだはっきりしない」と書く。
尋ねる形式は返答率が低く、分けられない人が大半になります。なります。
答えなかった人は、それ自体で「答えなかった」という一つの状態として扱えます。これは推定ではなく観測です。
そして、答えた人の内容は、答えなかった人にも使えます。同じ質問に対する答えの分布が分かれば、多い水準に向けて全体の内容を作れるからです。分けるためだけでなく、何を作るかを決めるためにも使えます。
ただし、ここには偏りがあります。答えた人は、答えなかった人より関心が高い層です。したがって、分布はそのまま全体の分布ではありません。
この偏りは取り除けません。取り除けないので、勘定に入れて読むほかありません。分布の形は参考にでき、比率の絶対値は使えない、という扱いになります。
尋ねる形式で取れるのは、尋ねた時点の状態だけです。三か月後には変わっているので、一度尋ねて名簿に保存する形式では、保存した値が古くなり続けます。
保存するなら、いつ尋ねたかも一緒に保存する必要があります。日付が付いていれば、古い値を古いものとして扱えます。付いていなければ、いつの状態か分からない値が、現在の状態として使われます。
セグメントを増やすと、運用が先に壊れる
細かく分けるほど良い、という方向には上限があります。しかも、その上限は効果ではなく運用の側にあります。
軸を二つ持てば、組み合わせは掛け算になります。三つの水準と、二つの購入状態と、三つの関心領域を掛ければ、十八の区分ができます。
十八の区分それぞれに内容を作ることは、実際にはできません。できないので、多くの区分は同じ内容を受け取ります。同じ内容を受け取るなら、分けている意味はありません。
つまり、分けた数と、実際に作った内容の数が一致していないと、分類は形だけのものになります。
さらに、区分が増えると、どの区分に何を送ったかの記録が複雑になります。記録が複雑になると、何が効いたかの判定ができなくなります。
案内でも、最初は二つか三つから始めることが推奨されています。この助言は正しく、そして理由の説明が運用の手間に置かれています。
理由はもう一つあります。分ける数は、こちらが持っている内容の種類を超えられません。
内容の種類が二つしか無いなら、分ける意味があるのは二つまでです。三つに分けても、二種類の内容を配り分けることしかできません。
したがって、順序は逆です。分け方を決めてから内容を作るのではなく、内容が増えた分だけ分け方が増えます。
この順序で進めれば分類は最初とても粗くなり、粗い分類は効果が小さく見えます。
そして、効果が小さいと採られる処方は、分類を細かくすることです。内容が増えていない状態で分類だけを細かくすれば、形だけの分類ができあがります。
区分が増えれば配信の総量も増え、それぞれに別々の配信を用意すれば、こちらの作業は区分の数だけ増えます。
作業が増えれば一通あたりにかけられる時間は減り、減った分は内容の密度として現れます。
つまり、分けることの効果と、一通の質は、同じ時間を取り合っています。どちらも良くすることはできますが、そのためには総量を減らす必要があります。
同じ内容を、区分ごとに一部だけ変えて送る形式もあります。この形式なら、作業は増えません。
ただし、その場合に変えているのは呼びかけの部分だけです。中身が同じなら、分けているのは形式であって内容ではありません。反応が上がったとしても、上がったのは名指しの効果です。
名指しの効果でも、上がるなら使えばよいのではないか。使えます。
そのうえで、名指しの効果は、中身が伴わない場合には消耗します。自分向けだと示されて開き、自分向けではなかったという経験が重なると、次からその示し方は働きません。
区分の数ではなく、区分の名前を読む
軸の性質は、反応の割合からは読めません。
一つ目は、それぞれの区分に、別々の内容を実際に作っているかどうかです。数えればすぐ分かります。区分の数より内容の種類が少ないなら、分類は形だけのものです。一致していれば、分類は作る単位として機能しています。
二つ目は、同じ人が区分を移動しているかどうかです。半年前と今で、同じ人が別の区分にいるか。移動が起きていないなら、分けている軸は属性です。状態は変わるものなので、状態で分けていれば移動が起きます。
三つ目は、区分の名前が、相手に見せられる形かどうかです。「休眠層」「見込み度中」は、相手には見せられません。見せられない名前は、こちらの都合から付いています。「まだ何が問題か整理中の方」は見せられます。見せられる名前は、相手の側の状態を記述しています。
三つとも、反応の割合を見ていません。分ける操作が相手の状態に合わせるためのものである以上、確認すべきは軸の側だからです。
三つとも、使える条件が付きます。区分が複数あり、ある程度の期間が経っていることです。分け始めた直後は、移動も蓄積もありません。
分け始めた直後にできるのは、いま持っている内容の種類を数えておくことです。種類の数が、分けられる上限になります。
状態で分けるのが正しいなら、属性のデータは不要になるのか。不要にはなりません。
属性は、状態が分からない相手に対する最初の当たりとして働きます。当たりを付けたうえで申告を求めれば、選択肢の並べ方を変えられます。
言えるのは、属性を出発点として使うか、結論として使うかの違いです。出発点として使えば、後で修正されます。結論として使うと、修正の機会がありません。
区分の数は、この記事の結論では出力の側にあります。入力の側に置くと、順序が逆になります。数を先に決めれば、内容のほうがその数に合わせて薄くなります。どの軸で切るかも、いつ尋ねるかも、内容が決まってから初めて決められます。
内容の種類が二つなら、分けられるのは二つまで。この上限は、名簿の規模でも、道具の性能でも動きません。区分の数と、内容の種類の数という二つの数字のうち、動かせるのは後者だけです。
結局のところ、いま自分の分類が何を分けているかは、名前を一つ読めば分かります。その区分名を、そこに入っている相手にそのまま見せられるか。見せられるなら、書かれているのは相手の状態です。見せられないなら、書かれているのはこちらから見た扱いの区別で、それは相手の関心とは別のものです。






