MBTIは当たるのか

MBTIは当たるのか|16タイプで自分が決まると感じる仕組み

はじめに

四文字のアルファベットで、人を十六の型に振り分ける。MBTIをはじめとするタイプ診断は、いま最も広く親しまれている自己理解の道具です。プロフィールに型の名を添え、相性を語り、自分の取扱説明書のように扱う。診断結果を読んで「まさに自分だ」と深くうなずいた経験を持つ人は、少なくないはずです。

MBTIの正しい活用法については、情報が揃っています。本記事が扱うのは、その土台にあたる部分です。受けるたびに結果が変わりうる分類を、なぜ私たちは「これが本当の自分だ」と信じ込み、その名に自分を合わせてしまうのか、その構造です。

結論を先に示します。問題は、タイプ診断を使うこと自体ではありません。揺れのある大まかな傾向を、揺るがぬ本質として受け取り、その上に自己像という重い建物を建ててしまうことです。タイプは、道具として使うぶんには役に立ちます。問われるのは、その受け取り方なのです。

受けるたびにタイプが変わる──再検査信頼性の低さ

診断の道具が信頼に足るかを測る、基本的な物差しがあります。再検査信頼性です。同じ人が時間を置いて同じテストを二度受けたとき、同じ結果が出るか。本当に安定した性質を測っているなら、数週間後に受け直しても、結果は大きく変わらないはずです。

ところが、十六タイプ系の診断について、教育研究者のデイヴィッド・ピッテンジャーは、その再検査信頼性の低さを指摘しました[Pittenger, 1993]。数週間から数か月のあいだに再受験すると、相当な割合の人が、前とは違うタイプに分類されてしまう。昨日は一つの型に振り分けられた人が、今日は別の型に振り分けられる。これでは、その診断が「あなたの生まれ持ったタイプ」を測っているとは、言えません。

ここで、こう反論したくなるかもしれません。結果が変わるのは、その日の気分や体調で回答が揺れるからで、本当の自分は変わっていないのではないか、と。けれど、この反論は問題を深めます。もし、その日の気分でタイプが変わるほど結果が回答の揺れに左右されるなら、その結果は「揺るがぬ本質」ではなく「その日のコンディション」を測っていることになる。どちらに転んでも、受けるたびに変わる結果を、一生ものの自己像の土台にはできないのです。

連続するものを、二つに割るという無理

なぜ、こんなことが起きるのか。それは、タイプ分けの仕組みそのものに理由があります。

タイプ診断は、いくつかの尺度のそれぞれについて、人を二つのグループに切り分けます。内向か、外向か。ところが、実際の人間の性質は、内向と外向のあいだの、なだらかな連続体の上に散らばっています。性格を科学的に測ろうとする心理学の主流は、いま、人を型に振り分けるのではなく、いくつかの性質を連続した目盛りの上で測る方法をとっています[John & Srivastava, 1999]。多くの人は、その中間あたりにいる。中間にいる人を無理に二つのどちらかへ割り振れば、境目のわずかな揺れで、割り振られる側が変わってしまうのです。

身長で考えると、この乱暴さはすぐに分かります。ある基準を境に「高い人」「低い人」に分ける診断があったら、基準ぎりぎりの二人は、ほとんど同じ身長なのに正反対のラベルを貼られる。性格のタイプ分けも、目に見えにくい性質に対して、これと同じことをしています。身長なら決してしない取り違えを、目に見えない性格については、あっさりとしてしまうのです。

▸ そもそも「タイプが当たっている」と感じる、その感覚自体がどこから来るのかは、バーナム効果とはで扱っています。

揺れる土台に、自己像を建てるとき

この脆さが問題になるのは、揺れる分類を「これが本当の自分だ」と信じ込み、その名に自分を合わせていくときです。

いったんタイプを信じ込むと、次に受けたときの違う結果は「今回の測定が不正確だった」と片づけられ、最初に信じた型だけが本物として残されます。揺れている土台のうち、都合のいい一枚だけを、動かない地面だと思い込む。そして「自分はこのタイプだから、これは向いていない」と、その型に沿って選択肢を狭めはじめる。土台が揺れているのに、その上に自己像という重い建物を建てようとしているのです。

もちろん、タイプ分けが何の役にも立たないわけではありません。大まかな傾向を掴む入口として、自分を眺める一つの角度として、タイプは使えます。問題は、その使い方ではなく、受け取り方です。揺れのある傾向を揺るがぬ本質として受け取ったとき、道具は自分を縛るものに変わる。いや、変えているのは道具ではありません。揺れているものを揺るがぬものと思い込む、その受け取り方が、道具を縛りに変えているのです。

まとめ:タイプは、握りしめず、手のひらに乗せる

MBTIをはじめとするタイプ診断が当たっているように見えても、その分類は、受けるたびに揺れ、連続する性質を乱暴に二つへ割ったものでした。だから、それを「生まれ持った、変わらない本質」として握りしめると、まだ試していない道が、型の外にあるというだけで見えなくなってしまいます。

必要なのは、より当たるタイプ診断を探すことではありません。同じ結果を、握りしめる代わりに、手のひらに乗せることです。「私はこの型だ」という存在の断定を、「私は今、こう振る舞う傾向がある」という可変の観察に戻す。この一言の差が、自己像に変化の余白を残します。その全体の設計図を、次の一歩として受け取ってください。診断への同一化が自己理解全体でどう働くかは、性格診断は当たるのかにまとめています。

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参考文献

【学術論文・理論】

  • Pittenger, D. J. “The Utility of the Myers-Briggs Type Indicator”(1993)Review of Educational Research, 63(4)
  • John, O. P., & Srivastava, S. “The Big Five Trait Taxonomy: History, Measurement, and Theoretical Perspectives”(1999)In Handbook of Personality: Theory and Research (2nd ed.), Guilford Press
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