なりたい自分になる方法

なりたい自分になる方法|念じるより小さく実行するほうが効く理由

はじめに

なりたい自分がある。理想の姿を思い描き、その状態を鮮明にイメージする。「私はもう、そうなっている」と念じる。引き寄せは、そう教えます。ところが、どれだけ思い描いても、行動が続かず、気づけば元の場所に戻っている。理想像は鮮やかなのに、なぜか自分は変わらない。

理想像をより鮮明に描く技術については、情報が揃っています。本記事が扱うのは、その土台にあたる部分です。なぜ、なりたい自分を思い描くだけでは変われないのか。そして、何が本当に人を変えるのかです。

結論を先に示します。変化の鍵は、何を得るかではなく、自分が何者になるかにあります。そして、その自己像は、念じることではなく、小さな実行を積み重ねることでしか、確かには育ちません。「なりたい自分」を思い描く順序を、逆にする必要があるのです。

行動を変える前に、自己像が要る

私たちは、何かを変えたいとき、たいてい行動から変えようとします。早起きしよう、運動しよう。けれど、行動だけを変えようとすると、たいてい長続きしません。その行動が、自分の自己像——自分は何者かという感覚——と一致していないからです。

「自分は怠け者だ」という自己像を持ったまま、早起きという行動だけを変えようとすると、行動と自己像のあいだにずれが生じます。そして、人は最終的に自己像のほうへと引き戻される。人は、自分が信じている自己像と、一貫した行動をとろうとする傾向を持つからです。「自分はこういう人間だ」という像があると、人は無意識にその像に合った選択をします。だから、行動を一つひとつ意志の力で変えるより、自己像という根を変えるほうが、はるかに少ない力で、はるかに広い範囲の行動が変わる。根を変えれば、枝葉はおのずと従います。

引き寄せは、この点で見当違いをしています。引き寄せが思い描けと教えるのは、望む結果——お金、成功、パートナー——です。つまり、得る結果に焦点を当てる。けれど、「お金を得た自分」を思い描くのではなく、「自分は、どういう人間か」という自己像そのものが変わる必要があるのです。健康になりたい人が「痩せた自分」という結果を思い描くのと、「自分は、自分の身体を大切にする人間だ」という自己像を持つのとでは、日々の選択への影響がまるで違います。前者は到達すれば終わり、到達しなければ挫折。後者は、身体を大切にする人間なら何を食べどう動くかがおのずと変わる、日々の選択すべてに効く根になります。

「私は成功者だ」と唱えることとの違い

「私は成功者だ」と唱えるのは、自己像を変えようとする試みに、一見似ています。けれど、これは現実の実感を伴わない、外から借りた台本を念じ込もうとするものです。実感に反する命令は反発を生み、空回りします。

自己像の変化とは、念じ込むことではありません。それは、小さな選択を積み重ねるなかで、「自分は、こういうことをする人間なのだ」という実感が少しずつ育っていくことです。唱えることと、実行を通じて育つことは、まったく別のものです。

▸ この「命令として唱える言葉」と「実感を伴う言葉」の違いは、アファメーションは効果があるのかで詳しく解剖しています。

自己効力感は、小さな実行から育つ

自己像を裏づけるのが、自己効力感です。心理学者アルバート・バンデューラが提唱したこの概念は、「自分は、目標を達成する行動を、うまくやれる」という自分の能力への信頼を指します[Bandura, 1977]。この効力感が高い人は、困難に直面しても粘り強く、結果として多くを成し遂げます。

では、効力感はどうすれば育つのか。バンデューラは、効力感を育てるいくつかの源泉を挙げていますが、そのなかで最も強力なのは、「実際に、自分でやってみて、できた」という経験です。小さくてもよいから、自分で行動し、その結果を手にする。この成功の積み重ねが、効力感の最も確かな土台になります。逆に、最も弱い源泉は、ただ頭のなかで「できる」と思い描くことです。実行を伴わない想像は、効力感をほとんど育てません。

ここに、引き寄せとの決定的な対立があります。引き寄せは「できた自分を、ありありと思い描け」と教えます。これは、効力感を育てる源泉のなかで、最も弱いものにすべてを賭ける方法です。しかも、前に見たように、「できたと感じる」ことは実行への動機をかえって奪う。引き寄せは、効力感を育てる最も弱い手段に頼り、最も強い手段——小さな実行——を結果的に遠ざけているのです。

実行と自己像は、らせんを描いて育つ

第四の道は、これとは逆です。大きな結果を思い描いて手応えを得ようとするのではなく、ごく小さなことを実際にやってみる。そして「できた」という事実をひとつ手にする。その小さな事実が「自分には、やれる」という感覚を、ほんの少し確かにします。次に、もう少しだけ大きなことに挑む。また、できる。

念じて得た手応えは、現実の裏づけがないためもろく、叶わない現実に直面すると簡単に崩れます。一方、小さな実行で得た手応えは、実際にできたという事実に支えられているため、崩れにくい。「自分は、これをやれた」という記憶は、誰にも、どんな現実にも、奪えません。そして、小さな実行で「できた」という事実を積むことは、そのまま「自分は、こういうことをやれる人間だ」という自己像を裏づけていきます。実行が自己像を裏づけ、裏づけられた自己像が次の行動を生む。自己像と行動は、どちらか一方を先に完成させるものではなく、らせんを描いて互いを育てていくものなのです。

まとめ:念じることをやめ、小さく動き始める

なりたい自分を思い描くだけでは変われないのは、あなたの想像力が足りないからではありませんでした。変化の鍵は得る結果ではなく自分が何者になるかにあり、その自己像は念じることではなく小さな実行でしか裏づけられないからです。想像は効力感を育てる最も弱い源泉であり、実行こそが最も強い源泉でした。

だから、なりたい自分になる方法は、理想像をより鮮明に念じることではありません。念じることをやめ、小さく動き始めることです。ごく小さな「できた」を一つ積むことが、鮮明な想像よりも、確かにあなたを変えていきます。その全体の設計図を、次の一歩として受け取ってください。この自己像と効力感の話が引き寄せ全体でどう働くかは、引き寄せの法則とは何かにまとめています。

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参考文献

【学術論文・理論】

  • Bandura, A. “Self-Efficacy: Toward a Unifying Theory of Behavioral Change”(1977)Psychological Review, 84(2)
  • Bandura, A. Self-Efficacy: The Exercise of Control(1997)W. H. Freeman
  • Oettingen, G. Rethinking Positive Thinking: Inside the New Science of Motivation(2014)Current
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