顧客に話を聞いたのに、材料が増えた気がしない方へ/「週に一回くらい」は行動の記述ではなく、加工された自己像である

顧客インタビューで聞くのは判断ではなく、最後の一件の観察である

「だいたい週に一回くらいです」。聞き取りの記録に、この形の一文が並びます。

一文としては答えになっています。相手は誠実に答えており、聞き手も知りたかったことを聞けたように見えます。それでも、この一文は行動の記述ではありません。複数の出来事を頭の中でまとめた結果であり、まとめる過程で頻度は丸められ、例外は落ちています。三週間空いた期間は、この一文の中に入っていません。

「意見ではなく行動を聞く」という助言は、既に広く共有されています。助言そのものは正確です。それでも「どうしていますか」という問いは、習慣を尋ねているので、まとめる作業を相手に要求します。問いの向きを変えただけでは、返ってくる形は変わりません。

ここで解けるのは、次の三点です。第一に、行動を聞いたつもりで要約が返ってくるのは、どういう機序によるのか。第二に、理由を尋ねたときに返ってくるものは、何として扱えばよいのか。第三に、聞ける相手が偏っているとき、その偏りはどこに現れるのか。

判定できない問いが一つ残ります。聞いた内容が、自分の設計にとって重要かどうかです。出来事が取れていて、記録も分かれていて、範囲も書けていて、それでも設計に効かないことはあります。この判定は聞き取りの側では行えません。何人に何分聞けば足りるかという配分も出てきません。加工の度合いは相手と行動によって変わるので、必要な件数が先に決まらないからです。

取り違えの実害は、記録の見た目に出にくいところにあります。録音があり、書き起こしがあり、複数人に聞いている。形式が整っている分だけ、中身が要約であることに気づきにくくなります。整った形式が保証しているのは、聞いた内容が正しく保存されたことだけで、保存の前に何が起きたかは形式の外にあります。

そして、要約から作った設計は、外れ方が静かです。相手の自己像に合わせて作るので、その相手に見せれば同意が返ってきます。同意は、確かめた証拠のように見えます。同意が返ってくるので、確かめたつもりになれます。実際の行動と噛み合っていないことが分かるのは、届けた後の反応が薄いときで、そのときには聞き取りの記録は既に手元を離れています。

答えが加工される機序、その加工が起きにくい問いの単位、聞ける相手の偏りが結論に及ぼす範囲。三つを続けて扱います。どれも、聞き手の技量ではなく、問いと場の側の条件で決まります。

顧客インタビューのやり方は、どこまで整理されているか

顧客インタビューとは、実際に商品やサービスを使っている人から、直接話を聞く作業のことです。数字だけでは分からない事情を知るために行うと説明されます。

やり方は、準備の順序として示されます。何を知りたいかを先に決める。対象を選ぶ。依頼して日程を取る。質問表を用意する。当日は場を和ませてから本題に入る。録音の許可を取る。

質問の設計についての助言もあります。はい・いいえで終わる形にしない。意見ではなく行動を聞く。「どうやって」を聞く。答えを誘導しない。

聞き方の助言も添えられます。相手が話し始めたら遮らない。沈黙を埋めない。気になった言葉は、その場で掘り下げる。分かったつもりで先へ進まない。

分析の助言もあります。録音を書き起こす。共通して出てくる言葉を拾う。複数の人に同じことを聞いて、重なる部分を見る。

並んでいる助言は、実務として正確です。質問表なしで臨めば聞き漏らしますし、意見を聞けば意見が返ってきます。書き起こしを取らずに記憶で整理すれば、印象に残った部分だけが残ります。どれも外せない手順です。

一式の底には、一つの前提が置かれています。相手は自分のことを知っていて、聞かれれば答えられる。聞き方さえ正しければ、正しい情報が出てくる。取り出しの問題として整理されています。

聞き方が要らないという話にはなりません。質問の形で答えが変わるのは事実で、設計は確実に効きます。

取り出しの問題として整理し切ったときに視野から外れるのは、相手の側で起きている加工です。答えるという行為は、記憶を取り出すだけの作業ではありません。取り出しながら、整理し、筋を通しています。筋の通った答えは、聞き手にとっても受け取りやすくなります。受け取りやすさが、加工を見えにくくします。

本人が言っているのだからそれが事実だ、という読み方はできます。言ったことは事実です。言った内容が、その人の行動を正確に写しているかは別です。両者を区別しないと、加工された自己像を材料として使うことになります。

区別しなかった場合、後で困る形は決まっています。設計がその自己像に合わせて作られ、実際の行動とは噛み合わないまま出ていきます。噛み合わなかったことは、聞き取りの記録を読み返しても分かりません。記録の側は正しく保存されているからです。

助言の一覧が加工に触れていないことにも、理由があります。一覧が扱っているのは、聞き手の側で制御できる項目です。質問の形、場の作り方、記録の取り方。相手の側で起きる加工は、聞き手が操作できる範囲の外にあるので、手順の一覧には入りません。入らないことは欠落ではなく、一覧が引いた線の帰結です。線の外にあるものは、線の内側を丁寧に実行しても現れません。

「行動を聞く」と言われても、返ってくるのは要約である

「どう思いますか」を「どうしていますか」に変えても、返ってくる形は変わらないことがあります。

「どうしていますか」という問いは、習慣を尋ねています。習慣を答えるには、複数の出来事をまとめる作業が要ります。まとめた結果が、答えとして出てきます。

まとめる過程で、二つのことが起きます。第一に、頻度が丸められます。第二に、例外が落ちます。「だいたい週に一回」という答えの中に、三週間空いた期間は入っていません。

この構造は、記憶の側の性質から来ています。個別の出来事の記憶と、一般化された知識の記憶は、別のものとして扱われます。この区別そのものは一次情報の書き方で扱いました。

習慣を尋ねる問いは、後者を呼び出します。一般化された知識のほうは、その人が自分について持っている像です。像は、実際の行動より整っています。

「メールはどのくらい読んでいますか」と聞くと、「だいたい全部読んでいます」と返ってきます。「最後に読んだのはどれですか」と聞くと、具体的な一通が出てきます。出てこない場合、それも情報になります。

傾向を知りたいだけなら要約で足ります。足りなくなるのは、設計の材料として使う場合です。「全部読んでいます」からは何も設計できず、「件名を見て、その日の三通目までは開く」からは設計できます。

要約が正確な場合もあります。単純で回数の少ない行動については、丸めが起きにくくなります。丸めが大きくなるのは、頻度が高く、例外の多い行動です。同じ聞き取りの中でも、行動によって信頼できる度合いが違うということになります。

判別は、答えの粒度で付きます。「だいたい」「たいてい」「基本的に」といった語が入っていれば要約です。日付や具体的な場面が入っていれば出来事です。

要約が返る理由には、質問の側の事情もあります。「どうしていますか」は答えやすい問いです。答えやすいので、相手は考え込まずに答えられます。場が滞らないため、聞き手にとっても進めやすくなります。進めやすい問いほど、加工された答えが返ってきます。滞らない聞き取りは、うまくいった聞き取りとは限りません。

一件ずつ聞く形に変えると、聞き取りの時間は長くなります。思い出す作業が要るからです。代わりに、聞ける件数は減ります。五人に要約を聞くより、二人に出来事を聞くほうが、材料が多くなることがあります。件数は、材料の量とは別の軸です。

「なぜ」を聞くと、理由が構成される

「なぜそれを選んだのですか」という問いには、たいてい答えが返ってきます。

返ってくる理由が、実際に働いた理由とは限りません。人は、自分の判断の過程を全部は把握していないからです。

この点については、古い論文があります。ニスベットとウィルソンは、人が自分の高次の認知過程について報告するとき、実際の過程を観察して報告しているのではなく、もっともらしい理由を構成している場合があることを、複数の実験をもとに整理しました(Nisbett & Wilson, 1977, Psychological Review, 84(3), 231–259)。

これは高次の認知過程についての自己報告を扱った論文であって、あらゆる自己申告が信用できないという主張ではありません。何をしたか、何が起きたかの報告と、なぜそうしたかの報告は、別の扱いになります。

実務に落とすと、単純な形になります。「なぜ」への答えは、その人が自分の行動に与えた説明です。説明は、行動そのものより整っています。

「なぜこれを選びましたか」と聞くと、「内容が自分に合っていると思ったから」と返ってきます。「選ぶ前に、他に何を見ましたか」と聞くと、比較した対象と、見た順序が出てきます。後者からは、判断の経路が復元できます。

理由を聞かなければ動機が分からない、という懸念は成立します。動機は、経路から推定します。何を見て、何をやめて、何を選んだか。その並びの中に、判断の材料が現れます。本人の説明は、その推定の一つの候補として扱えます。

理由を聞いてはならない、という話でもありません。聞いた答えを、事実としてではなく、その人の自己解釈として記録すれば足ります。混ぜなければ、両方が材料になります。

混ぜないための書き分けは単純です。「〜と話していた」と記録する。「〜だから買った」と記録すると、解釈が事実として保存されます。保存された解釈は、次に読むときには事実の顔をしています。

理由の答えには、使い道もあります。その人が自分の判断をどう説明するかは、その人が持っている枠組みを示します。枠組みは、書くときの語彙になります。事実としてではなく、語彙の材料として使えば、聞いた意味が残ります。

理由を一切聞かない形で進めると、聞き取りは事務的に感じられます。相手にとっても、自分の考えを話す場でなくなるからです。この場合は、理由を後半に置き、前半を出来事に充てる形が働きます。順序を変えるだけで、両方が取れます。

顧客インタビューの質問は、最後の一件を指定する形にする

要約を避けるには、問いの単位を出来事にします。

「最後に〜したのはいつですか」という形が、最も短い問いです。この問いは一件を指定しています。指定されると、まとめる作業が発生しません。

続けて聞けることも決まっています。そのとき何をしていたか。どこで見たか。その前に何をしていたか。その後どうしたか。いずれも、一件の中の出来事です。

一件から取れるものは、要約から取れるものより多くなります。場面、順序、きっかけ、中断した箇所。これらは、まとめた答えの中では落ちています。

「登録したのはいつですか」と聞き、「先月です」と返ってきたとします。「そのとき、何を見て登録しましたか」「登録する前に、何を探していましたか」と続けると、経路が出てきます。経路は、その人が言語化していなかった部分を含みます。

「覚えていません」という答えも、材料に数えます。この答えは、その行動がその人にとって印象に残る出来事ではなかったことを示します。

一件では偏る、という指摘は当たります。偏った一件を複数集めると、傾向が見えます。要約を複数集めても、傾向は見えません。要約は、既に平均化されているからです。平均を平均しても、元の分布は戻りません。

一件で聞ける行動には条件があります。ある程度の頻度で起きていて、記憶に残る形の行動です。毎日繰り返している細かい動作は、一件として思い出せません。この場合は、直近の一日を辿る形が使えます。昨日の朝から順に何をしたかを聞く。思い出せる範囲で、行動の並びが出てきます。

一件を聞く形には、掘り下げの余地もあります。出来事には前後があるので、そこから枝が伸びます。要約には前後がないので、続けて聞ける先がありません。「だいたい週に一回です」の後に続く問いは、ほとんど残っていません。

したがって、質問表の作り方も変わります。項目を並べるのではなく、最初の一問と、そこから伸ばす方向を用意する形です。項目を並べた表は、要約を集める形に向いています。表を埋めることが目的になれば、なおさらです。

一件ずつ聞けば、相手の負担は増えます。相手が記憶を辿る必要があるからです。負担が増えると、話が短くなります。短くなった分は、時間を長く取るか、聞く項目を減らすことで埋めます。両方できない場合、削るのは項目のほうです。項目を残して一件を諦めると、記録に残るのは要約だけになります。

聞き手がいる場では、答えは聞き手に合わせられる

聞き取りは、二人の場で行われます。場そのものが、答えに影響します。

答える側は、聞いている相手が誰かを知っています。商品を作った本人が聞いているなら、答えは作った人に向けたものになります。否定的な内容は、和らげられます。

この方向の偏りは、調査法の側でも扱われてきました。トゥランジョーとヤンは、望ましくないと受け取られうる事柄についての回答が過少に報告される傾向と、その大きさが調査の形式によって変わることを整理しています(Tourangeau & Yan, 2007, Psychological Bulletin, 133(5), 859–883)。人が介在する形式では、自己記入の形式より、望ましくない内容の報告が減る方向に働きます。

これは調査における回答の偏りを扱ったもので、事業者が行う少人数の聞き取りを測ったものではありません。示されたのは、聞き手の存在が回答に方向を持った影響を与えるという方向です。

和らげは、意図的とは限りません。相手の反応を見ながら話す過程で、自然に起きます。言いかけてやめる、程度を下げる、良かった点を先に置く。

したがって、聞き取りの結果には聞き手の側の影響が含まれています。影響を消すことはできません。できるのは、影響の向きを把握しておくことです。

向きは、多くの場合一つです。否定的な内容が減り、肯定的な内容が増えます。したがって、出てきた否定的な内容は、実際より小さく述べられていると読むことになります。

「少し分かりにくいところがありました」という一文が出たとします。この文は、和らげられた後の形です。「どのあたりですか」と続ければ具体が出てきます。続けなければ、小さな指摘として記録に残ります。残った記録は、実際より軽い問題として後で読まれます。

第三者に聞いてもらえば解決する、という手はあります。和らげの一部は減ります。代わりに、深く聞けなくなります。第三者は商品の中身を知らないので、掘り下げる先が分かりません。どちらを取るかは、何を知りたいかで決まります。

和らげが起きにくい場面もあります。既に長い関係があり、率直に話せる相手の場合です。この場合でも、向きは残ります。好意があるほど、否定的な内容は言いにくくなります。

聞き方には、一つ条件が付きます。否定的な内容を歓迎する姿勢を、最初に言葉で示すことです。「合わなかった点のほうが役に立ちます」と先に置くと、和らげの幅が少し減ります。

歓迎を示せば、今度は否定的な内容が過剰に出ることもあります。相手が期待に応えようとするからです。したがって、示すのは一度で、その後は反応を平らに保つことになります。頷きの強さも、材料の一部として相手に届いています。

誰に聞くかを決めた時点で、聞ける内容は決まっている

聞く相手を選ぶ作業は、聞き取りの前段ではなく、聞き取りの一部です。

選んだ相手が持っている経験の範囲が、聞ける内容の範囲になります。使い続けている人からは、続けられた条件が聞けます。途中でやめた人からは、やめた条件が聞けます。

両方に聞かなければ、片方の条件しか集まりません。そして、集めやすいのは前者です。続けている人のほうが、応じてくれる確率が高いからです。

この偏りは、顧客の声で扱った標本の問題と同じ形をしています。見えている集合が特定の条件で抜き出されている場合、その集合を正しく読んでも全体は分かりません。

対象の決め方そのものはペルソナの作り方で扱っています。対象は設計の入力ではなく出力であり、価値の基準を決めた後にしか絞れない、という順序です。聞き取りでは、この順序が「誰に聞くか」の判断に現れます。

何を知りたいかが決まっていない状態で聞くと、聞ける人から聞くことになります。聞ける人は、関係の近い人です。関係の近い人の答えは、和らげの幅が大きく、条件も似ています。

まず聞いてみて、そこから対象を決める順序もあります。ただし、最初に聞いた数人の答えが、以降の質問の設計を決めます。設計が決まった時点で、その先で聞ける内容も決まります。最初の数人の偏りが、全体に及びます。偏りは、設計へ移った時点で見えなくなります。質問表の中に、偏りの痕跡は残らないからです。

対象を厳密に決められない段階もあります。始めたばかりで、そもそも誰が使っているか分からない場合です。この場合は、決められないことを記録したうえで聞くことになります。記録があれば、後から偏りを補正できます。補正できないのは、決められなかったことを書かなかった場合です。

聞く人数には目安がありません。同じ答えが繰り返し出てくるようになった時点が、一つの区切りです。区切りが早く来る場合、対象が狭すぎることを示しています。同じ答えが揃うのは、全体が揃ったからではなく、似た条件の人だけを集めたからです。

対象を先に決めれば、決めた範囲の外にいる人の話は聞けません。その中に、次の対象が入っていることがあります。したがって、範囲外の人にも一件だけ聞いておく形が働きます。一件で足ります。外にいた人の一件が、範囲の縁がどこにあるかを教えます。

記録は、解釈の前に置く

聞いた内容は、聞いた形のまま残します。

書き起こしを取るのは、この理由によります。記憶で整理すると、印象に残った部分だけが残り、その時点で解釈が入ります。入った解釈は、後から取り除けません。取り除けないのは、どこが解釈だったかが記録に残らないからです。

観察したことと、それをどう評価したかを分ける規律は一次情報の書き方にあります。聞き取りでは、この規律が記録の段にかかります。

具体的には、二つを別の場所に書きます。相手が言ったこと。そこから自分が考えたこと。同じ場所に混ぜると、後で読み返したときに区別が付きません。

区別が付かないと、自分の解釈を相手の発言として記憶します。そして、その解釈を裏づける発言だけを、次の聞き取りで拾うようになります。一度目の解釈が、二度目の聞き取りの設計を決めるという形です。

「使うのを忘れてしまって」という発言があったとします。記録するのはこの一文です。「習慣化の仕組みが必要」と書くと、それは解釈になります。解釈は隣の欄に書けます。隣に置く限り、後から切り離せます。

解釈しなければ材料として使えない、という指摘は当たります。解釈は必要です。問題になるのは順序のほうです。先に記録を全部取り、後から解釈する。聞きながら解釈すると、解釈に合う発言を掘り下げ、合わない発言を流します。

その場で掘り下げる作業は、解釈とは別です。気になった言葉を「それはどういう場面でしたか」と聞くのは、記録を厚くする作業です。「つまり、こういうことですか」と要約して確認するのは、解釈を相手に承認させる作業になります。

確認が要る場面もあります。聞き間違いを防ぐためです。その場合は、相手の言葉をそのまま繰り返す形にします。言い換えると、こちらの語彙が入ります。入った語彙は、相手が承認した言葉として記録に残ります。

語彙の混入は、後で見分けにくくなります。記録の中に、自分が使い慣れた語が並んでいたら、それは言い換えた後の形です。相手が使わない語が記録に出てきたら、その箇所は確かめ直す対象になります。

記録を厚く取れば、整理の作業は増えます。一時間の聞き取りから、読み返す量が大きくなるからです。減らす方法は、聞く前に知りたいことを一つに絞ることです。絞れば、記録は厚いままで、読む範囲が決まります。厚さを削るのではなく、読み方のほうを決める作業になります。

聞けない相手のほうに、重い情報が入っている

聞き取りができるのは、応じてくれた人だけです。

応じてくれない人が三種類います。買わなかった人。買ったが使わなかった人。使ったが離れた人。この三つは、いずれも聞きにくい相手です。

そして、この三つが持っている情報は、応じてくれた人が持っていない種類のものです。なぜ選ばなかったか。どこで止まったか。何が合わなかったか。

したがって、聞き取りを重ねるほど、材料は片側に寄ります。寄っていることは、材料の中には現れません。現れないので、寄りに気づく機会がありません。

対処は、完全にはできません。できるのは二つです。第一に、聞けていない範囲を明示しておくこと。第二に、少数でも聞ける経路を作っておくこと。

登録して一度も開かなかった人に、一問だけ尋ねる形があります。「登録したときに、何を期待していましたか」。一問なら答えてもらえることがあります。

離れた人に聞くのは気が引ける、という感覚は残ります。聞き方に条件が付きます。改善のためであることを明示し、一問に絞り、答えなくてよいと添える。復帰を促す文面を混ぜると、聞き取りではなく案内になります。

聞けない人がいることを、欠陥として扱う必要はありません。すべての標本が揃うことはないからです。問題になるのは、揃っていると思って使う場合だけです。

そして、聞けない範囲は、他の材料で部分的に埋められます。どこで止まったかは、記録の側から分かることがあります。理由は分かりませんが、位置は分かります。

位置だけでも次の問いは立てられ、同じ箇所で止まっている人が多ければ、そこに何かがあります。何があるかは、その箇所まで来た人に聞けば分かることも多くあります。離れた人に聞けなくても、同じ位置を通った人には聞けます。位置は、理由の代わりにはなりませんが、問いの置き場にはなります。

明示の仕方は、一行で足ります。「使い続けている五人に聞いた」と書いておく。書いておけば、半年後にその記録を読む自分が、範囲を取り違えません。書かなければ、記録は「利用者に聞いた結果」として残ります。

聞けない範囲を意識すれば、聞き取りから引き出せる結論は弱くなります。「使っている人はこう言っている」までしか言えなくなるからです。弱いのは正確さであって、欠陥ではありません。強い結論を出したい場合は、標本を広げることになります。広げずに強く言えば、範囲の外まで結論が伸びます。

取った記録が材料になっているかを、整理の段で読む

行った聞き取りが設計の材料になっているかを確かめる方法が三つあります。いずれも整理の段で実行できます。

第一の確認は、記録から、日付と場面を含む記述をいくつ拾えるかを見ることです。

拾えないなら、聞けたのは要約だけです。「だいたい」「たいてい」で構成された記録は、その人の自己像であって、行動の記録ではありません。次の聞き取りで、問いの単位を出来事に変えることになります。

第二の確認は、相手が言ったことと、自分が考えたことが分けて書かれているかを見ることです。

分かれていないなら、どちらがどちらか、時間が経つと区別が付きません。区別の付かない記録は、自分の仮説を裏づける材料としてしか使えなくなります。

第三の確認は、聞けていない範囲を書き出すことです。

買わなかった人、使わなかった人、離れた人。それぞれ何人に聞けたかを数える。ゼロなら、その聞き取りから言えるのは、続けている人についてだけです。

人数も時間の長さも、三つの確認の対象ではありません。量は条件であって、材料になっているかとは別の軸だからです。

三つを通しても判定できない問いが、一つ残ります。聞いた内容が設計にとって重要かどうかです。三つを満たした記録でも、設計に効かないことはあります。この判定を行えるのは、聞く前の段だけです。何が分かれば次の判断が変わるのか。それが決まっていなければ、聞いた内容は「参考になった」で終わります。

何人に聞くか、何分聞くか、質問をいくつ用意するか。数字での答えは出しません。人数や分数は、まさに要約の側の言葉です。数字を先に置けば、一件を掘る時間より件数のほうが優先されます。配分は、知りたいことと相手の状況から決まります。

「だいたい週に一回」という一文が加工の産物であることは、聞き取りの場では見えません。相手は誠実に答えており、聞き手は聞きたいことを聞けているからです。加工がはっきり出るのは、同じ相手に一件を聞き直したときです。そこで出てくる差は、聞き方の巧拙ではなく、問いが指定した単位の差から生まれています。

記録が写しているのが相手の自己像なら、その人の枠組みを知る資料になります。起きた出来事のほうなら、設計の材料になります。どちらを手元に持っているかは、整理の段の三つの確認で分かります。そのうえで何に使うかは、その先の設計が決めます。

聞いた内容を掲載する段は顧客の声で、対象をどう決めるかはペルソナの作り方で扱っています。取った材料から何を書くかを決める段は、何を書けばいいかわからないときが隣に当たります。相手が語った判断ではなく起きた出来事のほうを取るのは、そこにしか材料がないからです。相手の言葉から何を取り出すのかという側は言語化の設計が扱っています。

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